長期投資とは何か。時間を味方につける理由。
第一部 — 1-1
長期投資とは何か。
時間を味方につける理由。
4原則の最初は「長期」です。なぜ長く持ち続けることが有効なのか。なぜ短期の値動きを無視できるのか。データと仕組みから、その根拠を理解しましょう。
1.「長期」とはどのくらいの期間か
まず「長期」という言葉の定義から整理します。このサイトで「長期」と言うときは、最低でも10年、できれば20〜30年という時間軸を指します。「そんなに待てない」と感じた人もいるかもしれません。でも、なぜそんなに長い時間が必要なのかを理解すれば、むしろ「長期でやるしかない」という結論になるはずです。
2. なぜ長期で持つと有利なのか
長期投資が有効な理由は、大きく3つあります。
理由① 世界経済は長期で見ると成長してきた
短期的には上がったり下がったりを繰り返す株式市場も、長期で見ると右肩上がりの傾向があります。なぜか。人口が増え、技術が進歩し、企業が新しい価値を生み出し続けているからです。
リーマンショックで世界の株式市場は半値以下になりました。コロナショックでも急落しました。でも、どちらも数年以内に回復し、その後さらに高い水準に達しました。長期で見ると、「下がった」という出来事は、長い上昇トレンドの中の一時的な凹みに過ぎませんでした。
※ 概念的なイメージです。将来の結果を保証するものではありません。
理由② 複利が時間と共に加速する
序章でも触れた複利の話です。投資の利益を再投資することで、利益がさらに利益を生む。この効果は時間が長ければ長いほど強くなります。
10年後:約163万円(増加分:63万円)
20年後:約265万円(増加分:165万円)
30年後:約432万円(増加分:332万円)
10年目から20年目の10年間で増えた額:102万円
20年目から30年目の10年間で増えた額:167万円
同じ「10年間」でも、後半の10年の方がずっと多く増えています。これが複利の加速です。長く続けるほど、後半に加速度的に増えていきます。
理由③ コストと税金が最小化される
売買を繰り返すたびに、手数料と税金が発生します。利益の約20%が税金として持っていかれます。長期投資は「買ったら基本的に売らない」ので、この税金の支払いを極限まで先送りできます。さらにNISA口座を使えば、利益にかかる税金がゼロになります。長期×NISAの組み合わせが最強と言われる理由の一つがここにあります。
3. 暴落があっても売ってはいけない理由
長期投資の最大の敵は、暴落時に売ってしまうことです。
多くの人は「これ以上下がる前に売って損失を確定しよう」と考えます。その気持ちは自然です。でも、それが長期投資においては最も避けなければいけない行動です。
100万円が70万円になった時点で売る
損失30万円が確定する
その後の回復の恩恵を受けられない
「底で売って天井で買い直す」という最悪のパターンになりやすい
100万円が70万円になっても持ち続ける
数年後に回復して110万円になる
長期的には複利で資産が育つ
「含み損」は一時的な状態に過ぎなかった
歴史的に見ると、リーマンショック後の米国株は約5年で回復、コロナショック後は約1年半で回復しました。暴落は怖いですが、長期投資家にとっては「一時的な安売りセール」という見方もできます。
暴落の種類を知っておく
リーマンショック(2008年):約5年で回復
コロナショック(2020年):約1.5年で回復
ITバブル崩壊(2000年):約7年で回復
回復に時間がかかった例
日本の日経平均(バブル崩壊後):最高値回復まで約35年
日本株だけに集中投資していた場合、長期投資は機能しませんでした。だからこそ「全世界分散」が重要なのです。一国・一市場への集中は長期投資でもリスクがあります。
4. 長期投資で最も難しいこと
長期投資の仕組みは理解できた。でも正直に言います。長期投資で最も難しいのは、知識ではありません。
相場が下がると不安になる。周りが「今は売り時だ」と言っていると動きたくなる。少し上がると「利確しよう」と思う。SNSで「この銘柄が熱い」という情報が流れてくると乗り換えたくなる。これは人間として自然な反応です。でも長期投資においては、この「動きたい衝動」に負けることが最大のリスクです。
「何もしない」ためにできること
毎月決まった日に自動で購入される設定にすれば、相場を見る必要がない。
② 証券口座を頻繁に開かない
毎日口座を確認するほど、余計な売買をしたくなる。月1回程度で十分。
③ 投資ニュースを見すぎない
「暴落」「危機」という言葉はアクセスを集めるために使われる。見すぎると不安になる。
④ 長期の目標を書いておく
「30年後に老後の資金を作るため」という目的を書いておくと、短期の変動に引きずられにくくなる。
仕組みで「考えなくてもいい状態」を作ることが、長期投資を続けるコツです。
5. 長期投資に向いている人・向いていない人
向いている人
投資に時間や手間をかけたくない人
毎月の余剰資金を着実に増やしたい人
相場の上下に一喜一憂しない(できるようになりたい)人
まず土台を作ってから応用を考えたい人
正直、大多数の人はこのタイプです。長期積立は「地味だけど最強」の方法です。
向いていない人
→ 長期投資は短期間で確実に増やせる保証はありません
生活費を削って投資しようとしている人
→ 相場が下がったときに精神的に耐えられない状況になる
相場を毎日見て、自分で判断したい人
→ それはトレードという別の世界です
「向いていない」というのは「長期投資をするな」ではなく、「まず準備を整えてから始めましょう」ということです。
次の記事では「積立」について深掘りします。なぜ毎月コツコツ積み立てることが、一括投資より有利な場面が多いのか。ドルコスト平均法の仕組みを理解しましょう。
※ このサイトは投資の勧誘を目的としていません。投資はご自身の判断と責任で行ってください。記載のデータは参考値であり、将来の運用成果を保証するものではありません。