資産運用とアメリカの歴史


序章 — 0-5

なぜ世界は
アメリカ株を買うのか。

「とりあえずS&P500」「迷ったらオルカン」という言葉をよく見かけます。でもなぜアメリカなのか。日本はどこへいったのか。前の記事で見た歴史の続きを、今度はアメリカ側から辿ります。

1.「なぜアメリカ?」という疑問

投資を調べ始めると、かなり高い確率で同じ言葉に出会います。

「とりあえずS&P500を買っておけばいい」
「迷ったらオルカン一択」
「長期投資ならアメリカ株が最強」

でも、少し立ち止まって考えてみてください。なぜアメリカなのでしょうか。日本はどこへいったのでしょうか。前の記事で「日本は失われた30年を過ごしていた」と書きました。その間、アメリカでは何が起きていたのか。この疑問を持つことが、投資を理解する上でとても大切です。

あなたが毎日使っているスマートフォン、検索エンジン、SNS、動画サービス。それらを作った会社は、どの国の企業ですか?

Apple、Google、Amazon、Meta、Netflix。ほぼ全部、アメリカの会社です。これは偶然ではありません。そこには、日本が停滞していた時代に起きた、大きな歴史的な変化があります。

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2. 日本が停滞した間、何が起きたのか

インターネット革命の始まり

1990年代、日本がバブル崩壊の後遺症に苦しんでいたちょうどその頃、アメリカでは一つの革命が始まっていました。インターネットの普及です。

最初は「メールが使える」「情報を検索できる」という程度のものでした。でも、それが少しずつ社会を変えていきます。オンラインで本が買えるようになった(Amazon)。誰でも検索できるエンジンが生まれた(Google)。人と人がつながるSNSが登場した(Facebook)。

日本はなぜ乗り遅れたのか 日本にもインターネットは来ました。でも、バブル崩壊の傷が深く、企業も個人も守りに入っていた時代でした。新しいことに挑戦するより、生き残ることが優先だった。その間に、アメリカは猛烈なスピードで新しい産業を作り上げていきました。

「国内企業」から「世界企業」へ

インターネットが生んだサービスには、大きな特徴がありました。国境を越えられること。です。

たとえばトヨタの車は、工場で作って船で運んで売る必要があります。でもGoogleの検索エンジンは、アメリカにサーバーがあれば、日本でも、インドでも、ブラジルでも使える。追加のコストなしに、世界中に届けられる。

この特性が、アメリカ企業を「国内企業」から「世界企業」へと変えていきました。今やGoogleは世界中で使われ、Amazonは世界中に配送し、iPhoneは世界中で売れています。

考えてみてください あなたの1日を振り返ってみてください。朝起きてスマホを見る(Apple or Google)、何かを検索する(Google)、動画を見る(YouTube=Google、Netflix)、買い物をする(Amazon)、SNSを見る(Meta)。気づけば、1日のほとんどの時間でアメリカ企業のサービスを使っているはずです。

ドルという存在

もう一つ、世界のお金がアメリカに集まる理由があります。「ドル」の存在です。

世界では、石油の取引も、国際貿易も、多くの金融取引も、アメリカのドルで行われています。ドルは単なる「アメリカのお金」ではなく、世界共通の決済通貨としての役割を持っています。

なぜドルが世界通貨になったのか 第二次世界大戦後、アメリカが世界最大の経済大国になったことがきっかけです。1944年のブレトン・ウッズ協定で、ドルが国際基軸通貨として定められました。その後も、アメリカの経済力と軍事力を背景に、ドルの地位は維持されています。

この結果、世界で不安が起きると、むしろドルに資金が集まるという不思議な現象が起きます。「有事のドル買い」と呼ばれます。リスクが高まるほど、安全資産としてドルが求められるのです。

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3. インデックス投資とは何か

ここまでの話をまとめると、アメリカには世界中のお金が集まりやすい構造があることがわかりました。でも、だからといって「Apple株だけを買う」「Googleだけに投資する」というのは、別の話です。

なぜなら、どの会社が10年後も生き残っているかは、誰にもわからないからです。かつて日本企業が世界を席巻していたように、今トップにいる会社が永遠にトップとは限りません。

では、どうすれば「アメリカ全体の成長」に乗ることができるのでしょうか。

ここで登場するのが「インデックス投資」という考え方です。

インデックス投資とは、特定の会社を選ぶのではなく、市場全体をまとめて買うという方法です。「どの会社が勝つかわからないなら、全部買ってしまえ」という発想です。

たとえばアメリカの代表的な株価指数「S&P500」は、アメリカの主要500社をまとめたものです。これを1つ買うだけで、Apple、Google、Amazon、Microsoft…アメリカを代表する500社すべてに、少しずつ投資できます。

インデックスって何? 株式市場全体の動きを表す指標のことです。S&P500はアメリカの主要500社、日経平均は日本の主要225社、オルカン(全世界株式)は世界約50カ国の主要企業をまとめた指標です。

世界的な経済学者や研究者たちの多くが、「プロの運用者でさえ、長期的にはインデックスに勝てないことが多い」という結論を出しています。個別の株を選んで売買するより、市場全体を持ち続ける方が、多くの場合で良い結果になりやすい。それがインデックス投資が支持される理由です。

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4. S&P500とオルカン、何が違うの?

投資を調べると必ず出てくるこの2つ。何が違うのでしょうか。シンプルに整理します。

S&P500
アメリカの主要500社に投資。「アメリカが伸びれば増える」という考え方。過去の実績は非常に強い。アメリカ一国への集中投資になる。
オルカン(全世界株式)
世界約50カ国の主要企業に投資。「世界全体が伸びれば増える」という考え方。分散は広いが、実際はアメリカの比率が約6割を占める。

どちらが正解かは、一概には言えません。ただ、どちらも「特定の会社を選ばず、市場全体に乗る」という基本的な考え方は同じです。細かい違いよりも、「始めること」「続けること」の方がずっと大切です。詳しくは第一部で改めて説明します。

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5.「今が強いものが、永遠に強いわけではない」

最後に、一つ大事なことをお伝えしておきます。

前の記事で見たように、1980年代の日本は「これからは日本の時代だ」と言われていました。世界時価総額ランキングの上位には日本企業が並んでいた。でも、その後どうなったかは、すでに知っている通りです。

今のアメリカが強いのは事実です。
でも、「今強いものが永遠に強い」という保証はありません。

中国かもしれない。インドかもしれない。
まだ存在していない国や産業かもしれない。

だから「全世界に分散する」という考え方にも、合理的な理由があります。

大事なのは、「今アメリカが強い理由」を理解した上で、それでも分散を忘れないことです。1つの国、1つの会社、1つの産業に全てを賭けない。これが投資の基本的な考え方であり、次の章で詳しく説明する「分散」の意味でもあります。

世界のお金がアメリカに集まる構造は、長い歴史の積み重ねで作られたものです。でも投資で本当に大切なのは、今どこが強いかを当てることではなく、世界全体の成長に長く乗り続けることです。その方法を、次の章から一緒に学んでいきましょう。

※ このサイトは投資の勧誘を目的としていません。投資はご自身の判断と責任で行ってください。